犬にちなんだ話(№329)

 今年は戌の年。これは私が小学校4年の時に習い、唱歌で歌った犬の話です。
『4月、文子さんの家に子犬がやってきた。その親が軍犬として戦地で働いていると聞き、この子犬もそうしたいと思った。「利根」と名付けられた子犬は愛情いっぱいに育てられ、賢くたくましく育った。正月には軍犬班に入り、厳しい訓練をこなし、どの犬にも負けない軍犬となったこと、大事に育てているから安心してくださいということを、係の兵隊さんから聞いた。また、文子さんからの手紙を「利根」に見せると、懐かしそうに匂いをかぎ、目の色を変えて喜んでいるということも教えてくれた。「利根」はその後勇ましく出征し、戦場では敵のいるところを探し当てたり、夜近寄ろうとする敵の見張りをしたり、隊と隊の間のお使いをしたりと素晴らしい働きをした。そのうち「利根」のついている部隊は多くの敵を相手に激しく戦う時がやってきた。「利根」はその一線と本部との間のお使いをしていた。やがて敵が「利根」のことを知り姿を見つけると弾を浴びせるようになったが、弾の下をくぐるように抜け連絡を続けた。突撃の日が来て、「利根」は最後の通信を本部に届けるために走り出した。「利根」が見えたころ、敵の弾が容赦なく飛んできて「利根」は倒れた。係の兵隊さんは、敵の弾が飛んでくるのも構わず這うように駆け出して「利根」の体をしっかり抱きかかえた…。その後、係の兵隊さんから、突撃で敵の陣地は占領した。「利根」は足を撃たれたけど、よくなっている。そして「利根」は甲号功章(軍犬、軍馬が授かる最高の勲章)をいただけるという知らせが文子さんにあった…。』
 文子さん、係の兵隊さんの愛情に満ちた慈しむ心に応えようとする「利根」の姿は、人にも通じることではないでしょうか。
 さて、愛知県三ヶ根山の慰霊碑の中に、軍犬、軍馬の慰霊碑があるそうです。管理人さんの話では、戦争が終わり武装解除して内地に帰還となったけれども、軍犬、軍馬はすべておいて行けと命令が出たそうです。お別れの時には、犬や馬たちが兵隊さんのところへやってきて袖口をくわえて離さなかったそうです。そうして目に涙をいっぱい浮かべていたとのことです。
 先の戦争では、多くの尊い人の命がなくなりました。そして同時に軍犬、軍馬といった動物たちもたくさん犠牲になったことを忘れてはいけません。戦争は絶対あってはならないのです。今平和と言われる世の中にいるからこそ、このことを真摯に考えなければならないと強く思います。
 世の中が平和で穏やかでありますように。
 それでは皆様だんだんよ。

(福井の隠居)

あとがき
 徒然草に「すべて、一切の有情を見て、慈悲の心なからんは、人倫にあらず」(すべての生き物を見て、慈悲の心を起こさないような者は、人間ではありません。)と出ています。
 2011年、全国の保健所に引き取られた犬猫234,062匹のうち、殺処分は185,086匹。殺処分の1位は高知県と言われています。これは一度ではなく、何度も続いているようです。

2018年03月27日