リレー・エッセー「ナウ・レッツ・ビギン」

Now, let's begin!

仁生会の幹部が毎月リレー投稿しているエッセーです。

ナウ・レッツ・ビギン一覧

新型コロナ、夏も感染力維持か? 第2波、第3波に警戒(№358)

 新型コロナウイルスの感染拡大が収まり、緊急事態宣言が全面解除されました。ただ、医療の専門家は、ほとんどの人がウイルスへの免疫を持っていない現状では、今後「第2波」「第3波」が来る可能性が高いとみて警戒しています。
 東京など大都市の新規感染者は、減りはしたものの残っています。感染報告ゼロの日が続いて一足先に宣言が解除された地域も、水面下で感染が続いている恐れがあります。
 政府諮問委員会のメンバーの1人は、人と人の接触制限が緩めばすぐに拡大に転じる可能性があると分析し、「感染者数が増えるのが6月なのか、7月になるのかは分からない」と語っています。感染が医療機関や介護施設に広がれば、短期間に多くの患者が見つかって医療提供体制がひっぱくする事態につながるでしょう。
 新型コロナウイルスには、夏に感染力が弱まり冬に強まる「季節性」があるとの見方も存在します。しかし、米科学誌サイエンス5月号に、ほとんどの人が免疫を持たない状態では、季節による影響はあるとしても弱く、ウイルスは急拡大するとの論文が掲載されました。諮問委のメンバーは「夏にリスクが下がるとは思っていない」と話しています。
 大橋順・東京大准教授も、季節性は強くなさそうだと指摘しています。「夏にいったん収束する可能性もあるが、その場合でも海外からの感染者の入国などをきっかけに、冬に再流行する恐れが大きい」と分析しています。
 大橋准教授によると、流行規模を抑える対策を取る限り、人口の6割が感染して集団免疫が成立するまで10年かかる可能性があるそうです。有力なワクチンの開発にも時間を要しそうです。それまでは対策を緩めたり厳しくしたりを繰り返す生活を続ける必要がありそうです。

(makonda)

板垣退助と世界遺産(№357)

 板垣退助といえば「板垣死すとも自由は死せず」というあまりにも有名な言葉をすぐ連想し、自由民権運動を先導した人物ということで、現在の時代感覚でいうと何となく弁舌に長けた口先先行の文民政治家との印象を抱いていました。そういう認識が一変したのはかつて東北に旅した時に会津若松市に立ち寄り、野口英世記念館に次いで鶴ヶ城の博物館を見学した時でした。戊辰戦争における白虎隊に関する説明には、当時の官軍東山道方面軍の総督府参謀が土佐藩板垣退助とあり、会津城攻略のための進軍経路の中で、城の背後に位置し最も手薄な飯盛山付近の侵入口に目をつけて集中攻撃をかけ市街戦に持ち込んで城を攻略したとされています。それが結果的に白虎隊の悲劇につながったわけですから、高知県人は会津ではよく思われていないのではと危惧しましたが、やはり彼の真骨頂は戊辰戦争で見られたような侍の気概と戦略眼に特徴づけられる武士としての面目にあったように思われます。
 一昨年修復成った陽明門を見に訪れた日光東照宮の近くにも若い頃の洋装の板垣退助の銅像があり、彼の地でも崇敬の的になっていることを知りました。官軍司令官であった彼が、日光東照宮に立てこもった大鳥圭介(医師でもあった)率いる幕府軍に対して由緒ある社殿を戦いで破壊するに忍びないので、山を下りて決戦するよう説得したと伝えられます。幕府軍もこれに応じたために、日光東照宮は戦禍を免れ、彰義隊の戦い(上野戦争)で多くの伽藍を焼失した寛永寺とは対照的に、日本人のみならず海外からの観光客でにぎわう世界遺産となって今日にいたっており、感慨を新たにしました。

(一旅人)

オーディオの楽しみ「音は脳で聞く」(№356)

 音楽を聴くといえば、今どきはスマホからイヤホンで聞くということかもしれません。音源がレコードからCD、さらにハイレゾになっても、昭和世代の音楽愛好家は大型のスピーカーから大きな音で聴きたいという方も多いと思います。趣味のオーディオの目的は「良い音」で音楽を聴くことです。「良い音」とは「原音をいかに忠実に再生する」ことか、忠実度よりむしろ「聞き心地の良い再生音」なのかは論争が尽きないところです。
 私もオーディオを手頃なシステムで楽しんでいる一人です。雑誌やウエブサイトの記事などを見るのが楽しみで、スピーカーケーブルや電源タップ、壁コンセント等を交換したり、果てにはボタンのようなものを壁やプレーヤーに貼ったり、ケーブルにベルトを巻き付けたり、他人が見ればおかしなことをして、「高音の伸びが良くなった」、「低温の響きが良くなった」、「変わらん?」等と楽しんでおります。
 最近「オーディオの科学」というサイトに行き当たりました。開設者はご高齢ですが元大学教官で、専門は材料工学、磁性物理学。オーディオに関する疑問を多方面にわたって科学的に検討されています。「音は脳で聞く」という欄で、F.E.ブルーム著「脳の探検」によれば、耳に入った音は鼓膜を振動させ、その振動が内耳の蝸牛に伝わり、最終的には側頭葉にある聴覚皮質で音とした認識される。ただこの時、音の信号は、色々なパスや中継点に分かれて伝わり、視覚情報や過去の音の記録、言語野、知識野などにある情報と相互作用しながら聴覚皮質で統合され、音のイメージの形成や言語の認識が行われるそうです。オーディオシステムの良し悪しを議論する場合、普通はその物理的、電気的特性を問題にしますが、本当は、耳に入った音をそのまま聞いているわけでなく、ほかの情報、過去の経験などと照らし合わせるなどの脳内処理を経た後、最終的に音として認識されます。実際、「こんな良い音だった?」、「なんか音がこもっている?」など同じ装置で再生しているのに日によってかなり印象が違う時があります。
 かのジュリアス・シーザーの格言に「人は自分の見たいものしか見ない」というのがあります。目や耳から入る情報の全てが見えてる(聞こえる)わけではなく、自分に都合の良い状況、あるいはその人の経験や知識と論理的整合の取れた情報しか見ない(聞かない)という格言です。オーディオに限らず、シーザーの言うように人間の世界には「自分の見たいものしか見ない」ということは日常茶飯事にあるのではないでしょうか。

(だだんだん)

映画を通して感じられるイランの人びと(№355)

 皆さんはイランという国にどんなイメージをお持ちだろうか?
 私が、現代イランの普通の人々の生き方に触れた、と感じたのは、4年ほど前に観た「別離」という映画であった。2011年製作のこの映画は、ベルリン国際映画祭の最高賞である金熊賞と、全編ペルシャ語の映画としてその年の米国アカデミー賞外国語映画賞をダブル受賞した、ということで興味を持ったのだが、ドラマはテヘラン市内に住むインテリ層の一家が舞台で、年頃になった娘を欧米に留学させたい妻と、アルツハイマー認知症の父親の介護を心配する夫、そしてこの父親の世話に雇われたヘルパーの娘という、日本社会と変わらないその状況が、私にとっては意外、かつ新鮮であった。
 私が次に出会ったのが、先年亡くなったアッバス・キアロスタミ監督の映画「友だちのうちはどこ?」(1987年)である。主人公は、間違ってクラスメートの宿題用ノートを持ち帰ってしまった小学生。「宿題を忘れた者は退学になる」と先生に聞かされていた彼は、ノートを返そうと、行ったことのない友だちの家を探しに出かけるが…。国境を越えて“人間”は同じと感じさせるこの映画は2005年、英国映画協会が選んだ「14歳までに見ておきたい50の映画」の5位にランクインしている。
 アカデミー賞の外国語映画賞を受賞しているもうひとつのイラン映画が「セールスマン」(2016)である。アーサー・ミラーの戯曲「セールスマンの死」の舞台に出演中の素人演劇人の夫婦。ある日、引っ越ししたばかりの自宅で、夫の留守中に妻が何者かに襲われ、ふたりの穏やかだった生活は一変する。事件を表沙汰にしたくないと警察への通報を拒否する妻に納得できない夫は、自分自身で決着をつけるべくひそかに犯人捜しを続ける。演劇と犯人探し、夫婦の感情のずれがスリリングに絡み合い、やがて物語は思わぬ展開に…。日本映画か、と思わせる丁寧なつくりで好感が持てる本作だが、主演のタラネ・アリドゥスティが来日インタビューで「自分は正しいから復讐(ふくしゅう)してもいい、という考えは、信じることのためにものが見えなくなっている。自分と同じく、人も幸せになる権利があると考えられない人がテロを起こす」 と述べている。イランを代表する女優として、国内で出演するドラマは国民の9割が見る、と言われるタラネ。こんな女優もいるんだと感じさせられた。

(J.F.)

パワハラ(怒る)と指導(叱る)の違い(№354)

 本年6月からパワハラ防止法が施行されます。企業にパワハラを防止する法的義務が生じます。管理職は、パワハラの無い働きやすい職場環境を整備することが義務付けられます。
 しかし、管理職が「パワハラを受けた」と指弾されることを恐れて必要な指導を躊躇してしまっては、組織運営や人材育成を妨げることになります。パワハラ(怒る)と指導(叱る)の違いについて、考えました。
 「怒る」とは、自分の抑えきれない感情をそのまま相手にぶつける行為で、自分本位です。
 「叱る」とは、相手の成長のために、改善すべきことを指摘する(人材育成)行為で、相手本位です。
 「パワハラ」は、自分の思い通りにならない相手や状況に対して、攻撃的、否定的に「怒る」ことです。一方「指導」は、相手のために、理性的、肯定的に「叱る」ことです。自分の言動が感情に流されて「怒って」いるのか、理性的に「叱って」いるのか、常に意識して感情を制御することが、パワハラにならないポイントです。
 また、「指導」をより効果的にするためには、相手が「指導」を受け入れやすくなるように、表現や状況などに配慮する必要があります。以下にポイントを列挙します。

①指導内容:組織運営や相手の成長に役立つものか。
  ⇒ 指導すべき事実について的確な改善策を伝える。

②状況:場所、周囲の人、相手の忙しさ、自分との関係性に配慮できているか。
  ⇒ 一対一での短時間の面談で伝える。

③表現方法:言葉、声の大きさ、表情、態度、目線など相手に与える影響に配慮できているか。
  ⇒ 理性的で丁寧な言葉で伝える。

④相手の理解度に対する配慮:指導内容を相手が理解できているか、配慮しながら言葉を選べているか。
  ⇒ 相手の人格を否定するような言動を発してしまうと、相手は「指導」とは受け止めない。

 以上のパワハラ(怒る)と指導(叱る)の違いを理解して、自分の言動を振り返り、自信をもって組織運営、人材育成を行ってください。

(まつりの夜店)

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