神無月に思うこと(№362)

 暦の上で10月は「神無月」です。古典の語義では、「神無月」=「神の月」という意味だそうです。ご存じのように、全国の八百万(やおよろず)の神々が、年に1回この時期に「神議(かむはかり)」なるものを催すため出雲に集合します。他の地域では神様が留守になるので「神無月」、出雲では神様がいるので「神在月」というのは民間俗説とのことです。
 例年、出雲大社では、神様を「お迎え」して、「神議を補佐」し、「お見送り」をするという「神迎祭」「神在祭」「神等去出(からさで)祭」の行事が行われます。今年の予定を調べると「11月24日~12月1日」となっています。11月?霜月?「神無月」「神在月」関係ないじゃん。どうなってんの?その訳は、出雲大社の古式ゆかしき行事はすべて旧暦で行われるからです。毎年旧暦の10月10日~17日に行われます。新暦でいうと11月になるのです。
 どうしてこんなにも月日がズレたのでしょうか?その理由は、旧暦(太陰太陽暦)から新暦(グレゴリオ暦)への改暦に失敗したからです。明治5年12月2日が旧暦最後の日で、新暦では翌日を明治5年12月3日とすべきところを明治6年1月1日としてしまった。その結果、新暦では約1か月分前倒しとなりズレが生じたのです。さらに、旧暦明治5年12月3日「師走」を新暦明治6年1月1日「睦月」としたため、和風月名までもが1か月ズレることになったのです。とても迷惑な話ですね。和風月名は、古来より四季・花鳥風月を愛でる日本人の心をよく表しているのに、それがズレるというのはとても残念ですね。令和の我々は、江戸時代の人とは異なる四季を感じているのかもしれませんね。
 ところで、八百万の神々はとても高貴な存在ですから、出雲訪問の仕方にも厳格な「しきたり」があるようです。神様たちは、出雲大社の西方1kmの「稲佐の浜」で神官たちに迎えられて、夜中に海から上陸し、徒歩で出雲大社「神楽殿」に集合します。その場で神官たちの奉仕を受けた後に「本殿」の東西に配置された「十九社」という宿舎に入るのです。そこに7日間寝泊まりをします。一方、「神議」は出雲大社西方950mに位置する出雲大社の摂社「上宮(かみのみや)」という小さな社で行います。議題は「人には予知できない人生諸般の諸事(縁結びや来年の収穫など)について」神議するとのことです。神様も人間臭い話をすることがあるのだと思うとちょっとおかしくて親近感が持てますね。
 私は出雲大社へ4回詣でたことがあり、訪問のたびに新しい発見をしております。皆さんもぜひ、古事記の故郷・出雲に行ってみませんか?きっと古代が偲べる良き体験ができると思いますよ。ちなみに、「神在祭」の期間に訪問すると「神在餅(じんざいもち)」即ち発音が訛って、今でいう「ぜんざい」が振る舞われるそうですよ。

(古今)

2020年10月27日